通信制大学の学生区分には、基本的にいくつか種類があります。
この記事では、科目等履修生(科目履修生)という区分について詳しく説明していきます。
目次
科目等履修生とは?
科目等履修生とは、通信制大学のカリキュラムの中から一部科目のみを受講する非正規の学生のことです。大学によって科目履修生と呼ばれる場合もあります。
これに対して、大学の正規カリキュラムにある科目をすべて受講する学生は正科生と呼ばれています。大学なら4年以上、短大なら2年以上の在籍が必要となることが多いです。
科目等履修生はいわば、ゲスト学生的な立ち位置です。興味のある科目、必要のある科目だけサクッと受講したいという人向けの制度といえるでしょう。
なお、通信制大学によって科目等履修生の制度は若干異なっています。好きな科目を1科目から自由に選べるところもあれば、取得できる資格ごとに一定の科目がパッケージングされているところもあります。
好きな科目を1科目から選べる大学例:放送大学の科目履修生
取得できる資格ごとに科目がまとまっている例:佛教大学の科目履修コース
科目等履修生のメリット
まずは科目等履修生のメリットを紹介します。
修了した科目は単位認定される
科目等履修生として履修、修了した科目は単位認定されます。
科目等履修生として勉強を続けるうちに、「やっぱり正科生として学びたい」と考える人もいるでしょう。
正科生になった時には、科目等履修生として取得していた単位を認定してもらうことが可能です(ただし認定単位数上限が設定されている場合があります)。
「いきなり正科生として通信制大学に入ってもシステムについていけるか分からない」「在宅でもちゃんと勉強できるんだろうか」と不安を抱えている人はまず科目等履修生として入学してみるのも良いでしょう。
通信制大学の勉強の仕方に慣れてきたころに、正科生として再入学すれば科目等履修生の時に取った単位を無駄にせずに済みます。
学費が安い
科目等履修生の場合は、履修する科目数が少ないのですから、その分学費が安くなります。
例えば放送大学で全科履修生(正科生に当たる)として入学すれば、卒業までにかかる学費は約70万円です。
しかし科目等履修生(科目等履修生に当たる)として学ぶ場合は科目当たり11,000円+入学料の7,000円。1科目だけ学ぶならたった18,000円で済みます。
通信制大学で学びたい科目が限定的な場合は、科目等履修生として入学する方がお得です。
興味がある科目のみを学べる
科目等履修生なら、興味がある科目を履修しやすいです。
正科生の場合はいくつもの科目がコースとしてセットになっているパターンが多いため、中にはあまり興味を持てない分野もあるかもしれません。
通信制大学で学び続けるには、本人のやる気が何より重要です。
科目等履修生としてなら、1科目から学べるとしている大学がいくつもあります。
仕事で必要な分野のみをピックアップしたり、「文学」と「IT」など異種分野の科目を自由に組み合わせて勉強したり、自由度が高いのが科目等履修生の魅力です。
興味のある科目だけ勉強すればよいのなら、途中でザセツしづらいのではないでしょうか。
効率よく資格が取得できる
科目等履修生は、効率よく資格取得ができるというメリットがあります。
例えば、保育士が特例制度(※)を使って幼稚園教諭の免許を取得する場合です。
※保育士としての勤務実績が一定年数あれば、少ない単位で幼稚園教諭の免許を取得できる制度
このケースでは取得すべき単位数が少ないため、条件を満たしている人は科目等履修生として入学するのが適しています。安く、短期間で資格取得ができるからです。
また、すでに教員免許を取得している人が一部の科目を追加で履修し、他の科目の教員免許や隣接校種(※)の教員免許取得を目指す場合にも使えます。
※中学校教諭免許保持者が小学校教諭免許取得を目指す場合など
資格取得に必要な単位はおおむねそろえているが、数科目分が不足している。そんな人が、科目等履修生として不足分の科目を履修するケースもあります。
資格取得のために科目等履修生として入学する人は多いです。大学側で資格取得向けの科目履修コースをあらかじめ設けている場合もあるので、チェックしてみてください。
科目等履修生のデメリット
次に、科目等履修生のデメリットを紹介します。
大卒資格は取得できない
科目等履修生は、正規課程で学ぶ学生区分ではありません。
科目等履修生として勉強しても、大卒資格(学士)を取得できるわけではないのです。
通信制大学に入る目的が大卒資格を取得することである場合は、科目等履修生を選ぶのは不適切です。
在籍できる期間が短い
科目等履修生が在籍できる期間は、正科生に比べて短いです。
例えば放送大学では全科履修生(大卒資格を目指す正科生)の在籍期間を最大10年としているのに対して、科目等履修生は半年間になっています。
佛教大学の場合は、科目履修コースの在籍期間は1年間となっています(ただし必要な単位が取り切れなかった場合は手続きをすることで最大3年まで在籍期間を延ばせます)。
在籍期間内に必要な科目の履修が終了しなかった場合は、科目等履修生として再入学することも可能です。
ただし、入学手続きをもう一度行う必要があり、手間や費用の面から無駄が生じる可能性が出てきます。
通信制大学での学習が長期間になる可能性がある人は、科目等履修生よりも正科生の方がじっくりまなべるのではないでしょうか。
履修科目数や科目の種類が制限されることがある
科目履修生はもともと一部の単位を履修するための制度なので、履修登録できる科目数に制限がかかる場合があります。
また、教育実習などの実習系科目は履修登録できない場合が多いです。
北海道情報大学通信教育部は、科目等履修生でも教育実習の履修ができる珍しい大学です。
入学条件が正科生より緩いわけではない
科目等履修生は、非正規の学生という区分から入学条件が正科生より緩いように思われるかもしれません。
しかし、科目等履修生として入学する場合は正科生と同じく高校を卒業していること(大学院の場合は大学を卒業していること)が条件になります。
「高校を中退しているから、正科生は無理だな…じゃあ科目等履修生として勉強しよう」というのは無理なのです。
もし、高校を卒業していないけれども通信制大学に入りたいという場合は、科目等履修生ではなく特修生としての入学がおすすめです。
特修生は高校卒業資格を持たない人でも通信制大学で学べる制度です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。⇒高校中退でも通信大学で学べる特修生制度とは?
科目履修生に向いている人・向いていない人
メリットとデメリットを前提に、科目等履修生に向いている人と向いていない人の特徴をまとめてみました。
科目等履修生に向いている人
- できるだけ安く大学で勉強したい人
- すでに大学を卒業している人
- 特定分野の科目だけを学びたい人
- 学部や学科にとらわれず好きな科目を学びたい人
- 資格取得のために履修すべき科目が少ない人
- 正科生として入学する前に、通信制大学の学習システムを試したい人
科目等履修生に向いていない人
- できるだけ早く大卒資格取得したい人
- 高校中退している人
- 資格取得のために多くの科目を履修する必要がある人
- じっくり学びたい、あるいは学習に時間がかかる可能性がある人
科目等履修生になるべきかどうかを考えよう
ここまで、科目等履修生の特徴を紹介しました。
科目等履修生として通信制大学の授業を受けることには多くのメリットがありますが、大学に入学する目的によってはデメリットを感じてしまうかもしれません。
科目等履修生の特徴とメリット、デメリットを知り、自分に合った学生区分を見つけていきましょう。